2013.10.17
昇温時間について
先月より、アルミニウムを高温で熱処理すると発生することがある膨れ(ふくれ:ブリスタ)の対策として、「昇温時間を短くしたい」というご依頼がありました。希望は1時間以内です。
通常は1トン近くを1度に熱処理していますので、設定温度を上げれば雰囲気(大気)の温度は約500℃程度まで上げることは可能ですが、製品そのものの温度を上げるのは難しいため、処理量を大幅に減らして実験を行いました。
3段のバスケットに分散させ、炉の中の空気の循環を良くするために配置を工夫し、9点の実体(実態)温度を測定しました。実体温度測定とは、製品に熱電対(ねつでんつい:温度センサー)を取り付けて、製品の実際の温度を測定することです。
その結果は、温度の上昇が場所によって異なり、100℃以上の差が発生しておりました。その後、バスケットへの詰め方を変えながら実験を行っておりますが、全部が同じような温度で上昇する方法は、やはり少量にした方が良いという結論になります。
硬さという点では、溶体化処理で過飽和固溶体にすることが目的ですので、昇温の時間は関係ありません。例えば、水は零度になると凍りますが、氷を作るときに冷却スピードは関係なく零度になれば凍ります。不純物の点などで冷却スピードによって変化はありますが、氷を作るという点では零度になるまでの時間は問題になりません。
昇温時間は、例えば1トンのものを熱するときには、どうしても上・下や外・中で温度の上昇の程度が変わります。それなので、1部は溶体化処理の温度に達し、一部はそれよりも100℃ぐらい低いということも起こりえます。
そのため、1回のアルミ熱処理を行うときに製品の均一化を目指すのであれば、ヒーターの出力をやや弱めにして、ゆっくりと加熱していくことでバラツキが軽減されます。
熱いお風呂に入った時に、皮膚の表面だけが先に熱くなることと似ています。ぬるいお湯に入ってからお湯を熱くしていけば均一に暖かくなっていきます。
ただ、やはり「短時間で昇温したい」というご要望があれば、できる限り達成できるようにお手伝いをさせていただきたいと考えております。
熱処理に関するご要望等、ございましたらお気軽にお問い合わせをいただければ幸いです。