2013.06.27
硬さのバラツキを抑えるには?
アルミの熱処理でたまに質問を受けますが、
「製品の硬さのバラツキを最小限に抑えるにはどうすれば良いか?」
というテーマがあります。
例えば1回の熱処理で1トンぐらいを熱処理したとしましょう。そうすると、上部や下部、あるいは中央部などで硬さが違っていたり、あるいは上部の隣同士でも硬さが違う場合があります。
違うと言っても、例えばHB(10/500)で96.3と100というような差の場合もあります。測定誤差も考慮すると、「だいたい同じようなもの」とも言えますが、やはりきちんとした数値で統一された結果になる方が製品が安定していると判断できます。
硬さを測定するときの誤差もありますので、全部が同じというのは難しいのですが、「ほぼ同じ」という状態は製品によってはけっこうあります。
熱処理をするときに硬さのバラツキを抑えるために行うことと言えば、
1.昇温時間を伸ばす
2.保持時間を伸ばす
ということが考えられます。昇温時間を伸ばすというのは、例えば500℃に製品を熱するときに、600℃の空気中に入れると空気に触れたところは先に温度が上がり、内側にある製品は暖まるのが遅くなります。
缶ジュースを温かいお湯に入れて温めるときに、少し時間が経って表面の温度が上がっていても中身はまだ冷たいという経験をされたことがあるかもしれません。
缶ジュースを水に入れて、そこから水ごと温めていくと、缶ジュースの温度は均一になります。内部で対流するので温度差は発生しますが、水が100℃になってしばらくすると缶ジュースの内部も100℃に均一になります。危ないので蓋は開けておかなければいけませんが。
T6の場合は、溶体化処理は少し保持時間を伸ばすことが可能ですので、内部の均一化には良い方法になります。時効硬化処理の場合には過時効になってしまいますので保持時間を伸ばすことはできません。
昇温時間については、例えば水を凍らせるために0℃まで下げて行く時に、0℃まで早く下げてもゆっくりと時間をかけても、凍り始めるのは0℃になってからです。つまり、変化する温度に到達しなければ変化は起こりませんので昇温時間をコントロールしても品質に影響はありません。
ただ、アルミニウムの熱処理の場合には、目的とする硬さの範囲はけっこう広く設定されているため、規格内であれば多少のバラツキがあっても問題が無い場合の方が多くあります。コストと品質を考えながら最適な熱処理を行うように色々とご相談をさせていただければと思います。
2013.06.20
アルミ熱処理の硬さ試験の試料の厚さについて
アルミニウムの熱処理で、応力除去のみを目的とする場合を除くと、熱処理を行う前後で硬さの変化が起こります。
T6やT7では硬くなり、焼鈍を行うと柔らかくなります。
アルミ熱処理で行う硬さ試験の規格はロックウェルのHRBとブリネルのHB(10/500)になります。10/500というのは10mmの鋼球を500kgfの荷重をかけたという数字で、目的によって変更します。アルミニウムの熱処理の試験では10/500です。規定の保持時間は10~15秒です。
製品によって、あるいは社内規格によって試験方法を変える場合もありますが、過去データや社外へのデータ提出などを考えると一般的な測定方法を用いる方がスムーズです。
さて、その試験についてですが、試料を測定するときに水平な台に載せるなどの注意点もいくつかあります。試料の温度は10~35℃、台の上でガタツキがないこと、すでに測定した圧痕がある場合にはそれと離れた場所で測定するように具体的な距離も決まっています。
また、試料が薄い場合にも正確な測定結果は得られません。
ブリネルの場合にはだいたいHBで100のときには1.2ミリぐらい、HRBの場合は90ぐらいで1.2ミリです。これらは硬さによって最小厚さが決まっています。
ただ、実際に業務で行なっておりますと、やはり試料は10ミリ以上はあったほうが良いと思います。より正確に測定できるという感じです。アルミニウムの板などの熱処理を行う場合、可能であれば厚みが10ミリ以上の同じ材料で作られたテストピースなどを一緒に熱処理して、それを測定させていただきたいという希望をお伝えしております。
硬さ試験ついては、JISのZ2245を参照していただければ、より詳細な情報を得ることができます。
その他、アルミニウムの熱処理について何かご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせをいただければ幸いです。
2013.06.13
アルミ熱処理の専用治具について
弊社で「専用治具」というと、例えば「熱処理用バスケット」、「硬さ測定用治具」、「変形確認用治具」、「矯正用治具」などがあります。
「熱処理用バスケット」というのは、主に量産品についてですが専用の入れ物に入れて熱処理を行います。形状が特殊で熱処理をするときにキズ・打痕の心配があるものや、通常のバスケットだと数量が少ししか入らないもの、温度分布を良くする目的などの理由からお客様のアルミニウム製品の形状に合わせた専用治具を作成する場合があります。
「硬さ測定用治具」は、硬さ測定をするときにナナメになっていたり測定をするときにガタツキがあるような形状のものについて、専用の台を製作して測定します。それにより、いつも正確な測定をすることが可能になります。
「変形確認用治具」は、溶体化処理で水冷したときや、T5処理後の製品検査などで変形を確認するために使用します。変形を確認後に矯正作業を行なって修正します。これはお客様が製作をして弊社に持ってくる場合が多くあります。
「矯正用治具」は、アルミニウム製品を矯正するときに使うもので、ハンマーで叩くときの台だったり油圧の機械を使用するときに下に当てるものだったりします。
その他、熱処理をするときに炉に使用するもなど、色々なものがあります。これらは弊社の長年のノウハウから作られたものが多く、熱処理の品質向上や短納期の実現などにも役に立っています。
今後も色々な治具を考案して使用していく予定です。
熱処理や治具などについての御質問等もいつでも受けておりますので、よろしくお願いいたします。
2013.06.06
ISO9001による不適合製品の管理について
ISO9001:2008の8.3に「不適合製品の管理」という項目があります。
それによると、
「組織は、製品要求事項に適合しない製品が誤って使用されたり、又は引き渡されることを防ぐために、それらを識別し、管理することを確実にしなければならない。」となっています。
弊社の場合は、過去のトラブルとしてはキズ・打痕が発見されるようなことがありました。入荷検査のときに発見されたとしても、社内規程によりお客様に連絡をして指示を仰ぐと共に製品に識別をしております。
ここで、ISO9001:2008では、
a) 検出された不適合を除去するための処置をとる
とありますが、これは例えば「小さなキズなのでヤスリで削っておいてください。」と言われたときには行いますが、基本的に弊社で独自に判断して行うことはありませんので、この項目は「顧客と相談をしてから」ということになります。
それ以降の項目については特に解説は不要と思いますが、弊社はお客様の所有するアルミニウム製品をお預かりして熱処理していますので、すべてお客様の判定基準が第一となります。
また、弊社で扱っているのは主にアルミニウム製品ですので、「雨に濡らさない」「落としたり乱暴に扱わない」というのは顧客要求事項として明確になっていない場合でも注意をして作業しております。これについてはISO9001:2008の中に規定されている通りですが、弊社で色々と気を配って熱処理をさせていただいております。
アルミニウムの熱処理に関してのお問い合せ等は、いつでもお気軽にご連絡をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。