2025.10.29
焼きなまし(焼鈍)の炉冷について
アルミニウムの熱処理にはいくつか種類があります。
硬くする、軟らかくする、歪を取る、という3種類と、砂焼きなど他の熱処理もあります。
その中で焼きなまし(焼鈍)は「軟らかくする」という熱処理になります。
温度としては、たとえばA2014は約345℃、A6061は約415℃で保持したあとで「炉冷」を行います。
炉冷というのは、その名の通りで炉の中に製品を入れたまま冷まします。
これは、炉から出すと大気に触れて急に冷えてしまうため、炉の中でゆっくりと冷ます方法です。
規格では「260℃以下までは毎時30℃以下の速度で行うことが望ましい」となっています。
通常で考えると、たとえば415℃で保持したあとでヒーターのスイッチを切れば、自然に温度は下がっていくと予想できます。
しかし、実際には415℃でヒーターを切ると炉内の温度は急速に下がっていきます。
それなので、1時間に30℃以上の温度が下がらないように、ヒーターのスイッチを入れたり切ったりしながら調整します。
実際、冷却のときには作業者が常に制御盤のところで監視することになります。
焼きなまし(焼鈍)の場合には、このように厳密に行う場合と、ただの炉冷にする場合、あるいは保持が終わったら炉から出してしまう場合など、いくつかのパターンがあります。
お客様が望む結果を出すために、色々とお打ち合わせをさせていただければ幸いです。
アルミの熱処理について、何かご質問等がございましたら、いつでもご連絡いただければと思います。
よろしくお願いいたします。
(記事作成:森)
2025.10.22
角型炉を修理しました。
弊社で活躍中の角型炉ですが、内部の修理を行いました。
該当箇所は「マッフル」と呼んでいる板です。
炉内の壁に設置してあるヒーターの熱が製品に直接当たらないようにするための遮蔽板ですが、炉内の空気を循環するための整流板の役目もあります。
入口付近に少し隙間があったため、中のマッフルを移動しようとしたところ、うまく移動できないので補修しました。
炉内の入口の下のところも隙間があったため、保温材を新しくしました。
炉によっては、お客様から指定されていて、変更前に相談をして許可をいただき、補修後に実体試験などを行ってから今後の対応を考えるのですが、今回の炉は指定外でしたので弊社の判断で行いました。
写真はこちらです。
炉の扉の横の側面の銀色の板がマッフルですが、わかりにくいかもしれません。
それと、天井部にある熱電対はダブルだったのですが、記録計には1点だけを記録していました。
確認用にダブルで使うことにして、その配線も行いました。
色々とメンテナンスを行いながら、熱処理を行っております。
ご質問、ご要望等がございましたら、いつでもご連絡いただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
(記事作成:森)
2025.10.15
製品の詰め方(置き方)について
弊社では毎日、様々な形状・材質の製品の熱処理をさせていただいております。
熱処理用治具に製品を詰める際には、「変形しないようにする。」「焼入れの際、製品に水が溜まらないようにする。」などと製品の形状によって置き方を色々と考え工夫をして詰めております。
鋳物ですと、T6熱処理(溶体化処理)を行うと変形や歪みが発生しやすくなります。特に板状の長い製品や厚みの薄い製品は変形や歪みが大きくなる事が多いです。板状・パイプ形状の製品は立てて熱処理を行う事で変形や歪みを少なくする事が可能です。
また、お椀のような形状やタンクのような形状の製品は置き方によっては焼入れの際、水が溜まってしまいます。水切りを行っても取り切れない為、1個ずつ水を出さなくてはなりません。
製品の中に水路がある製品の場合も水が抜けない為、エアブローを行い、水を飛ばすなどの作業が必要になる場合がございます。
変形や歪みが発生しそうな場合は、熱処理前にお客様にお話しをさせていただいてから、熱処理を行っております。また製品の置き方などの指定がある場合は、そのように治具に詰めさせていただいております。
アルミニウム製品の熱処理についてお困りな事などございましたら、いつでもご連絡をいただければ幸いです。宜しくお願い致します。
(記事作成 堀越)
2025.10.08
T4とT6は、どう違う?
アルミニウムの熱処理を行うときに「質別記号」というものを使います。
それは「どのような熱処理を行ったか」が判断できるようにという目的で作られています。
その中でT4とT6という処理があり、高温から急冷したあとに時効させるという点では似ているのですが、実際にはどのように違うのかについて解説します。
T4は溶体化処理の後に自然時効させます。
T6は溶体化処理の後に人工時効硬化処理を行います。
自然時効というのは、大気中でそのまま時効させることで、実際には24時間ぐらい放置しておけば大丈夫です。硬さはだんだんと硬くなっていきます。
それに対して人工時効硬化処理というのは約200℃ぐらいに加熱をして時効を促進させる方法です。これは炉に入れてから7~8時間程度の時間で完成します。
T4は主に2000系や6000系の合金でよく行う熱処理方法です。
人工時効硬化処理の方が硬さはアップしますが、製品の目的によってT4かT6を選択することになります。
出荷検査を行うときには、T4の場合は24時間以上が経過しないと正確な数値が出ませんので、納期はT6よりも長くかかります。
もし、もっと早く出荷して欲しいという要望があった場合には、硬さ測定をお客様の会社でお願いするか、あるいは暫定的に測定して「参考値」として硬さの測定データを提出することもあります。
お客様の要望によって、色々な対応が出来ますので、何かあればご相談させていただければと思います。
アルミニウムの熱処理に関するご質問等はいつでもお受けしておりますので、お気軽にご連絡をいただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
(記事作成:森)
2025.10.01
熱処理作業成績表について
弊社では、ご希望に応じて各種のアルミ熱処理作業データを作成しお渡ししております。
何時、どのような温度と時間で熱処理をおこなったか、そして硬さはどのくらいになったかを記入しております。
場合によっては、熱処理の温度と時間を記録したチャート紙の原本やコピーしたものを提出しています。
また、熱処理作業時に使用した「熱処理管理シート」のコピーを提出することも可能です。
弊社での保管・管理が不要な場合には原本をお渡ししております。
熱処理管理シートとは、入荷から出荷までの作業工程の日時と作業者がわかるようになっているものです。
そして、硬さ測定については測定数を増やしてデータを分析することもできます。
どのような熱処理をしたかという記録の提出、更に硬さや実体温度(製品の温度)などのデータを追加することもできます。
アルミニウム熱処理について、ご不明な点等ございましたらお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
宜しくお願い致します。
(記事作成 横田)


